おむすび《omusubi》

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日本人にとって、塩と水をつけた手で、炊いたうるち米を塊にまとめ、海苔で巻く、この食品は、最も基本的で馴染みのある食べ物であるように思っていた。

先日海藻について調べた際に、それはあくまでここ数十年の間に生まれ育った日本人にとって言えることなのだということを知った。

おむすびを描けといわれたら、多くの人が白い米と黒い海苔を描くのでは、と思うのは私だけではないだろう。そもそも、まず、うるち米が毎日誰でも食べられるということが、50年以上前の日本では当たり前ではなかった。白米の常食化が、戦後一番重大な食事の変化であるらしい。それだけでなく、板海苔も50から60年ほど前にようやく日本津々浦々に行き渡るものになったそうだ。今日、海草の中でも食卓で最もよく目にするあの海苔は、千三百年以上もの長い歴史を経て、数十年前にようやく日本中に一般化した食品になったのである。

試しに、父親に、子供の頃この様なおむすびを食べていたかと尋ねてみたら、少し考え、そういえば確かに、おむすびは食べていたが、このようではなかった。白米などはなく麦やらその他混ざったもので、海苔は、子供の頃は家にはなかったし、食べたこともなかった。とのことで、本当にそうであったかととても驚いた。